演芸なんでもござれ

 

育英出版の別名義である児訓社が昭和16年5月に出したポケット版の実用書である。軍歌・愛国歌から、小唄、端唄、浪花節、歌舞伎声色、校歌まで収録した歌唱集。おそらくは宴会の余興用のハウツウ本だったと思われる。おもしろいのは奥付である。定価金二十五銭の横にはんこで参拾銭と訂正されているのだ。『新寶島』にも同じような定価訂正をしたものがあって、今や研究者諸氏の頭を悩ませているわけだが、どうもこの会社はちょいちょいこんなことをしていたのではあるまいか。あるいは大阪の出版社ではごく当たり前の商慣習であったやも知れぬ。この手のものは安く手に入るので、いろいろ調査してみようか、と考えている。