オオサカンドリーム

朝、文庫版の解説を書くことになっている西田俊也さんの『オオサカンドリーム』のゲラが届いた。これはなかなか懐かしい、というか思い出深い小説なのである。
西田さんとはじめて会ったのも大宝寺町の事務所だった。当時、大阪の新聞や雑誌でマンガ家兼コラムニストとして活躍していた小杉なんぎさんが、ぜひ西田さんと会ってほしい、と言ってこられたのだ。小杉さんはそのころ作家業とは別に、梅田のショットバーの店長もやっていて、かなり精力的に人脈を広げていた。西田さんの小説は福武書店から出ていた『少女A』を読んだことがあって、とても感性の鋭い書き手だな、と感心していたので「それはぜひ」という返事をしたのだった。しばらくして、おふたりで訪ねてこられたと記憶する。
そこからつきあいが始まって、しばらくして西田さんが発表したのが『オオサカンドリーム』だった。プロモーションやらコミカライズの際のロケハンやら、あまり役には立たなかったが、ほんのちょっと協力させたもらって、なんとなくクリエイティブな気分にさせてもらったものだ。
懐かしさもあって気安く引き受けたのはいいが、すでに『少女A』の文庫版には、ひこ・田中さんがすばらしい解説を書いているので、プレッシャー大なのだ。さて、どうしたものか?

『009』『キャプテンハーロック』を責了して。午後は「神保町シアター」まで。成瀬巳喜男監督の『妻の心』を観る。昭和31年の作品で舞台は地方都市(群馬県?)。老舗の薬局の次男に嫁いだ妻。長男は家を継がずに東京で結婚。しかたなく店を継いだ夫はさまざまな事業に手を出して失敗し、今度は自宅の空き地に喫茶店をオープンしようとしている。戦災を免れた古い町にも高度成長の波はひたひたと押し寄せようとしていて、旧態依然の薬屋の台所は苦しい。義妹の結婚が決まって義姉が娘を連れてやってくるが、そのまま居着いてしまう。さらに、いったんは東京に帰った長男も家に戻ってくる。会社が倒産したのだ。友人に勧められた事業を始める金が必要な長男は、母親を動かそうとする。そんな中でも夫は煮え切らない。妻は家のごたごたから逃げるように、喫茶店開店の準備に奔走する。そんなとき、融資を依頼することになった幼なじみの銀行員にふと心を惹かれる。家族とか夫婦ということを考えさせてくれる佳作。とにかく早春の地方都市の風景がすばらしい。映画はモノクロだねえ。

5時前に産経新聞の平松さんが訪ねてきて、しばらくして今度は同じ産経の東京本社文化部の方から電話。杉浦茂関連で取材ということだったので、もっとお詳しい方たちを紹介することにした。

セコム広報室の安田室長からは次号『せこむらいふ』につき電話。

明日は、009の青焼き校正と、デジハリのゲスト講師に使うパワーポイントづくりなど。