「異人たちとの夏」@シアタークリエ

午前中は家の掃除や散歩に使う。
午後、家のものと木場で買いものをしてから日比谷。
ああ、買ったのはオイルレザーのポシェット。カジュアルな格好で出かけるときは、ポケットが少ないものだから、ついつい文庫本やらなんらやを家のものに持たせる癖があって、「ええかげんにしいや」となったのであった。


シアタークリエで「異人たちとの夏」を観る。
山田太一の原作を鈴木勝秀が脚本演出したストレートプレイ。

テレビのシナリオライター・原田は42歳。妻と離婚して家も車も貯金も慰謝料にとられ、仕事場にしていたビルで一人暮しを始める。そんなある日、彼は生まれ故郷の浅草を30年ぶりに訪ねる。原田の父は腕の良い寿司職人だったが、30年前、彼が12歳のとき両親は交通事故で死に、原田は名古屋の叔父の家に引き取られたのだ。大学生のときに再び上京した原田だったが、浅草には何故か足を踏み入れていなかった。30年ぶりの浅草はずいぶん変わっていたが、六区の浅草演芸場の前あたりで彼は懐かしい人にあう。死んだはずの父親だった。父親は昔のままの姿で、彼を呼びとめ自分のアパートに誘う。そこには、母親も待っていた。不思議な気分になりながらも、彼らと話していると幸せな気分になる原田。原田の新しい恋人・桂はそんな原田を心配するのだが……。

現代の怪談であり、人間にとって生きることの意味や孤独とはいったい何なのかを考えさせてくれる素晴らしい舞台。池脇千鶴子の母親役がチャーミング。内田有紀もいい。友人でもあるプロデューサー役は「安楽椅子探偵」で何度も何度もお顔を見た羽場裕一。これまたうまい。椎名桔平も中年のいい感じを出している。ただ、これを「ファンタジー」として括ってしまう東宝サンはいかがなものか、と。「怪談」でいいのよ。怪談は人情噺、と言ったのは中山市朗さんだったっけ。


ところで、東宝特撮の名作「ガス人間第1号」が後藤ひろひとの脚色/演出/出演で10月にシアタークリエで舞台化される。ちょっと楽しみかも知れない。