ロートレック・コネクション展

朝から渋谷のザ・ミュージアムまで。「ロートレック・コネクション展」を観る。そのタイトルの通り、ロートレックの作品を中心に、師匠のブランストー、ボナ、コモンをはじめ、コルモンのアトリエの友人だったベルナール、グルニエゴーギャンゴッホやモンマルトルの画家たちの作品も集めて、ロートレックの人物を浮かび上がらせようとした展示。コルモンのアトリエは、先日観た市村さんのゴッホでも中心的なエピソードになっていたので、絵を見ただけでさまざまな情景が浮かんでくる。ロートレックや、ブリュアンをはじめとするモンマルトルのスターたちの写真も興味深い。ロートレックの時代はもう写真の時代なのだ。

神保町に戻って、アルカサールで食事後、TAKANOでお茶。

2時から古瀬戸で辰巳先生インタビュー。『劇画漂流』の中で、佐藤まさあきさんたちに影響を与えた作品として描かれていたプレ劇画時代の傑作『黒い吹雪』の復刻版がまもなく、日本とカナダで出版されるのにあわせたもの。日本版には解説のかわりに掲載される。2時間以上取材したが、辰巳さんは映画や本で読んだことをいちいち描き留めるのではなく、頭の中にそれとなく記憶しておいて醸成させるタイプだという話がおもしろい。あの独特の世界観はそうして生まれるのだろう。『黒い吹雪』に関しても、実際に描いたのは20日。脱獄というテーマはおそらく島田一男の影響だというのだが、特定の作品ではなさそう。舞台を吹雪の中に設定したのは、斜線で表現すれば速く描けるという計算で、はやく原稿料が必要な事情があったからだという。ほかに、日の丸文庫周辺のおもしろいエピソードもいろいろ。なお、辰巳先生はすでに『劇画漂流』の続編を執筆中とか。これは楽しみ。また、シンガポールの映画監督が「TATSUMI」というタイトルで、辰巳さんのマンガをセミドキュメンタリー風の作品にする話もあるようで、来年早々にシンガポールに行くそうだ。来年は75歳というのに、ますますお元気なのであった。なお、『劇画漂流』は「このマンガを読め!」でも2位に入った。