黒い吹雪

taihouji212010-01-16

新書の原稿。ぼつぼつと。
青林工藝舎から辰巳ヨシヒロさんの復刻『黒い吹雪』が届いた。アマゾンなどには未だ登場していないようだ。定価は1500円+税金。安い! 3000部の限定出版である。
「劇画」というネーミング以前の、表現としての劇画の出発点とも言える作品で、当時のマンガ青年たちに大きな影響を与えた。昨年小学館クリエイティブから出た松本正彦さんの『隣室の男』とともに、昭和30年代の若きクリエーターたちが新しいマンガ表現として「何を目指していたのか」を知るためには欠かせない貴重な本である。
英文科で「シャークスピアは古い」と無視することはない。映画を勉強する人たちは過去の名作をきちんとおさえた上で研究を進めている。マンガだって同じ事だと思うのだけどね。「中野サン、今の学生は手塚なんて知りませんよ」「劇画なんて死語ですよ」と訳知り顔で言われても困るのだ。知らないなら教えてあげるのが大人だと思う。
なお、巻末には辰巳さんとあたしのインタビューが出ている。これがおもしろい。いや、あたしの手柄ではない。編集人の浅川くんのまとめかたがうまいのである。

当時の大阪のマンガ界や貸本出版のことを知りたい人にはこの本も。

劇画漂流 上巻

劇画漂流 上巻

劇画漂流 下巻

劇画漂流 下巻